HISTORY

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Global Hip-Hop Hip-Hop史

Bronx、黄金期、南部、Trap、Drill。

1990s-2010s

J Dilla / Madlib / Beat Scene

MPCの揺れ、レコードの埃、LAの低音。ラップの裏側でビートが主役になった。

Golden Ageのサンプリング文化は、90年代後半から2000年代にかけてプロデューサーそのものを前に出した。J Dillaはクオンタイズしきらないドラムの揺れで、Madlibは膨大なレコードの記憶で、ヒップホップの聴き方を変えた。そこからStones Throw、LAビートシーン、Low End TheoryFlying LotusBrainfeederへ、ラップの外側まで低音とビートの実験が広がっていく。

サンプリング文化が、ある地点でプロデューサー自身を主役に押し出した。ラッパーの伴奏を作る裏方だったビートメイカーが、声を乗せない「ビートそのもの」で聴かせ始める。デトロイトJ Dillaはクオンタイズしきらないドラムの揺れで、Madlibは膨大なレコードの記憶で、ヒップホップの聴き方を変えた。そこからStones Throwロサンゼルスのビートシーン、Low End Theoryという水曜のパーティ、Flying Lotusとレーベルbrainfeederへ、ラップの外側まで低音とビートの探求が広がる。同じ頃、東京では瀬葉淳=Nujabesが別の水源を掘っていた。この時代の主役は、歌でもラップでもなく、ビートを作る手そのものだ。

聴きどころ

ドラムが少し前後に揺れる感じ、サンプルの質感、ベースの沈み方、声を乗せなくても曲が立つ瞬間。J DillaMadlibは、派手な展開よりループの中の癖を聴く。Brainfeeder以降は、ヒップホップのビートがジャズ、電子音楽、ベースミュージックへほどけていく流れを見る。

Timeline

1990s

Detroit、LA、NYのプロデューサー文化が太くなり、サンプラーの手つきが作品の個性になる

1996-2000

J DillaSlum Village、A Tribe Called Quest、The Pharcydeらの音で揺れるドラムの感覚を広げる

2000s

MadlibMF DOOMJ DillaStones Throw周辺で、掘る耳とビートの癖が前に出る

2006

J DillaDonuts』が、ビートアルバムとして大きな基準点になる

late 2000s-2010s

Low End TheoryFlying LotusBrainfeederがLAビートシーンをクラブ、ジャズ、電子音楽へ接続する

顔ぶれ/現場/レーベル

背景

J Dillaの揺れ

Dillaのドラムは、機械のグリッドにきれいに収まりきらない。少し遅れ、少し前に出る。そのズレが、ラッパーの声を待つ前からグルーヴを作っている。

Madlibの掘り方

Madlibはサンプルの量だけではなく、選ぶ場所と残し方が強い。荒いループ、短い断片、ジャズやソウルの影が、曲の中でそのまま呼吸している。

Stones ThrowからBrainfeederへ

Stones Throwが掘る耳を前に出し、Low End TheoryBrainfeederがその耳をクラブ、電子音、ジャズの方向へ開いた。Flying Lotus以降、ビートはラップの伴奏だけではなく、一つの宇宙として聴かれるようになる。

日本のビートシーンと接続する

Nujabesのメロウさ、DJ Krushの暗い空間、BudamunkやSTUTSの手触りは、この流れと並べて聴ける。日本語ラップを追う時も、誰がビートを作ったかが記事の芯になる。

日本の現場では

日本ではDJ Krush、Nujabes、grooveman Spot、Budamunk、STUTSらを聴く耳ともつながる。ラップの言葉だけでなく、ビートそのものを主役として聴く入口になる。

ジャケット / 映像 / 服

ジャケットは派手なスター写真より、レコード棚、手描き、コラージュ、抽象画が似合う。服はブランドより、掘る人、作る人、夜のスタジオの温度が出る。

関連キーワード

MPCSamplingBeat TapeCrate DiggingWonkyJazz Rap

音源・人物・現場

Archive

要点

LA Beat Sceneは、UK Dubstepの米国版ではない。J DillaMadlibLow End TheoryBrainfeederのビート文化が、UK Bassと2008年前後から強く交差した流れとして読む。

親子関係ではなく交差

UK側はGarage、2-Step、Dubstep、FWD>>、DMZへ進み、LA側はJ DillaMadlibStones ThrowLow End Theoryへ進んだ。両者は別々に育ち、Flying Lotus以降に太く交わる。

2008年前後の接続

Flying LotusLos Angeles』とBrainfeeder、UK側のHyperdubやWarp周辺が、低音、ビート、ジャズ、電子音を同じ棚へ近づけた。ここからBeat Sceneはクラブ側にも開く。

WonkyからTrapへの橋

Hudson Mohawke、LuckyMe、TNGHT周辺は、南部ラップの808と電子音を結びつける橋になった。Dubstepが直接Trapになったのではなく、複数の横道を通って接続した。

日本の耳にも戻す

DJ Krush、Nujabes、Budamunk、STUTSを並べると、日本のビート感もこの流れと会話できる。ラップの伴奏ではなく、ビート単体の作家性として聴く。

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Dilla Timeという発明
編集部

打ち込みのドラムは、放っておくと機械的に正確になる。拍がグリッド(等間隔の格子)にぴたりと乗り、揺れが消える。J Dillaがやったのは、その正確さにわざと逆らうことだった。

彼はドラムの一打ずつを、グリッドから微妙に前後へずらして置いた。理屈で言えばタイミングのミスに近い。だが手で置いたそのずれが、聴くと体温になる。速すぎず遅すぎず、酔ったように揺れる独特の時間感覚——後年これはDilla Timeと呼ばれるようになった。重要なのは、この揺れが偶然の一回ではなく、再現可能な形で定着したことだ。人間のよれを、機械の上でプログラムとして繰り返せるようにした。それが発明だった。

道具はAkaiのMPC。四角いパッドを指で叩いて音を置いていく小さな箱で、Dillaはその指の癖ごと、揺れを刻み込んだ。楽器が弾けなくても、指が覚えたタイミングがそのまま音楽になる。だから彼のビートには、演奏者の署名のようなものが残っている。

Dillaのよれは、以後のビートメイカーの共通語になった。正確に打ち込めるようになった時代に、あえて正確さを崩す——この逆説が、ビートを「作る人の個性が出るもの」に変えた。伴奏が主役になれたのは、伴奏に指紋が宿ったからだ。

ビートテープという形式
編集部

完成した曲ではなく、短いビートの断片を大量に並べたもの——ビートテープという形式が、この時代の裏の主役だった。1分に満たないループが、次々に生まれては消えていく。J Dillaの遺作『Donuts』(2006)は31曲入りで、多くが1〜2分しかない。曲というより、ビートのスケッチ集に近い。

この形式は、もともとプロデューサーがラッパーに聴かせる「見本市」だった。カセットやCD-Rにビートを詰めて回覧し、気に入った一つを誰かが曲にする。裏方の道具だったものが、2000年代に入ると、それ自体が鑑賞の対象になっていく。断片のまま、完成させないまま聴かせる——この割り切りが、ビートシーンの美学になった。

流通の形も変わった。カセットとCD-Rの手渡しから、2000年代後半にはSoundCloudのような場へ移り、ビートメイカーが世界中に断片を投げられるようになる。ここから、いわゆるlo-fi hiphopの潮流が育つ。勉強や作業の背後で延々と流れる、あの短いループの美学の水源をたどると、かなりの確率でDillaの周辺と、東京の瀬葉淳=Nujabesに着く。二人とも、完成の重さより、断片の呼吸を選んだ作り手だった。

ビートテープは、ヒップホップが「歌の伴奏」という役割を降りて、独立した聴きものになった形式である。声がなくても成立する——その発見が、この時代の一番大きな置き土産だ。

このコラムで聴ける曲 J Dilla『Donuts』

Lineage

系譜

01
系譜

Golden Ageのサンプリング(過去を掘る手法)→ プロデューサーの前景化(J Dilla / Madlib)→ Dilla Timeの定着とビートテープ形式 → Stones Throw、LAビートシーン、Low End Theory(2006-2018)→ Flying Lotusとbrainfeeder → lo-fi hiphopとして世界の日常へ。東京ではNujabesが並行する水源を掘った。

Essential

この時代の5枚

01
J DillaDonuts』 (2006)

発明者の遺作にして教科書。短いループが円環になる構造ごと聴く

02
MadvillainMadvillainy』 (2004)

MadlibMF DOOMの到達点。掘る記憶の量がそのまま音になっている

03
Slum VillageFantastic, Vol. 2』 (2000)

Dillaのよれが最初に住んでいた家。共通語になる前の原液

04
NujabesMetaphorical Music』 (2003)

東京側の水源。lo-fiの静けさがどこから来たか

アーティスト

この時代の10組