まず、この1曲
レゲエの知識は、いったん全部忘れていい。ボブ・マーリーの名前も、ラスタカラーも、あとから来る。最初にやることは一つだけ——1曲を、ちゃんとした音量で聴くことだ。
Koffee「Toast」。2018年、当時18歳のジャマイカの新人が歌った曲だ。この曲を収めたEP『Rapture』は、2020年のグラミーでベスト・レゲエ・アルバム賞を同部門史上最年少・女性初で獲った。3分もない。まずそのまま聴いてほしい。
聴きながら、一つだけ気にしてみる。リズムの重心がどこにあるか。多くのポップスは1拍目、つまり「イチ、ニ、サン、シ」のイチにアクセントが来る。レゲエは違う。イチが軽くて、後ろに重心が落ちる。頭で乗ろうとするとつんのめり、体の力を抜くとちょうどよく揺れる。この「後ろにもたれるリズム」がレゲエの体幹で、スカからダンスホールまで、形を変えながらずっと生きている。
もう一つ。ベースの音量に耳を置いてみる。レゲエではベースが伴奏ではなく、ほとんど主役だ。メロディを支える低音ではなく、低音そのものを聴かせる音楽。だからスマホのスピーカーより、イヤホンかヘッドホンのほうが、この音楽は何倍も伝わる。
「Toast」が気持ちよかったなら、それで今日は十分。理由はまだ言葉にならなくていい。重心が後ろにあるリズムと、主役の低音。この二つの感覚が体に残っていれば、次の段で耳が一気に開く。