DTM / REGGAE DRUMS

ワンドロップのキックを、DTMで作る

BEAT 1 IS EMPTY

鳴らさないことで、鳴る

RIDDIM SEQUENCER

ワンドロップは、1拍目を鳴らさないリズムだ。4拍のうち、キックが落ちるのは3拍目。そこにリムショットかスネアが重なる。1拍目は空いたままにする。この「落とした1拍」が名前の由来だとされる。

ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのカールトン・バレットが確立したとされ、ルーツ・レゲエの土台になった。ただ、歴史の話は後回しでいい。先に手を動かしたほうが早い。

ロックやヒップホップに慣れた耳だと、1拍目にキックが無いのは落ち着かない。踏みたくなる。でもそこを我慢して空けておくと、何が起きるか。低音が立つ。ベースラインが前に出て、3拍目のキックが一発ごとに効くようになる。

裏を返すと、ごまかしが効かない。手数で押すリズムなら多少雑でも流れていくが、ワンドロップは鳴らす回数が少ない。一発の質がそのまま出る。だからキックの音作りが、そのままリズムの出来になる。

FIVE KNOBS

キックを分解する

キックの合成音は、たった一本のサイン波から作れる。高い周波数から低い周波数へ、一瞬で滑り落ちる。その落ち方と長さを決めるのが、次の5つだ。

TUNE — どこに着地するか

滑り落ちた先の周波数。40〜50Hzあたりが目安になる。低くするほど沈むが、下げすぎるとスマホや小さいスピーカーで何も聴こえなくなる。ダブやステッパーズは40Hz前後まで下げて、鳴らす場所そのものを低くする。

PUNCH — どれだけ速く落ちるか

高い所から着地するまでの時間。速いと硬い「コッ」という頭が付き、遅いと「ボワッ」と伸びる。ワンドロップは間があるぶん、少し遅めにして音の胴体を残したほうが座りがいい。

DECAY — どれだけ伸ばすか

音が消えるまでの長さ。短く切るとタイトになるが、ワンドロップでは次の音まで距離があるので、余韻を残したほうが空間が埋まる。伸ばしすぎるとベースとぶつかるので、ベースラインを鳴らしながら決める。

DRIVE — 小さいスピーカーで聴こえるか

歪ませて倍音を足す。純粋なサイン波は、スマホのスピーカーやノートPCではほぼ消える。低音そのものが再生できないからだ。倍音を足しておくと、低い音が鳴っているという情報が上の帯域に残り、小さいスピーカーでも輪郭が伝わる。サウンドシステムで鳴らす前提の音楽を、スマホで聴かせるための保険だと思えばいい。

CLICK — 芯を足す

アタックの頭に、ごく短いノイズを足す。DRIVEと目的は近いが、こちらは輪郭そのものを作る。ミックスが混んできてキックが埋もれたら、音量を上げる前にここを少しだけ足す。

RECIPE

そのまま打ち込める数値

音を出す

RIDDIM SEQUENCER の SYNTH パネルを開いて、KICK タブに次の値を入れる。読みながら、同じ画面で同じ音が出せる。

ワンドロップ:TUNE 44 / PUNCH 120 / DECAY 240 / DRIVE 12 / CLICK 8

まず1拍目を空けたまま、3拍目だけを鳴らして聴いてみる。それからベースを重ねる。キックが引いた場所にベースが入ってくるのが分かるはずだ。

次に、2つのつまみだけ動かす。

ステッパーズ:TUNE 42 / PUNCH 140 / DECAY 300 / DRIVE 38 / CLICK 20

DRIVE を 12 から 38 へ、DECAY を 240 から 300 へ。それだけで、同じキックがUKダブ側の顔になる。歪みと長さが増えると、音が前に出て、空間を埋めにいく性格に変わる。ワンドロップが「引く」音だとすれば、こちらは「押す」音だ。

数値は出発点でしかない。自分の耳とスピーカーで決め直したほうがいい。特に TUNE と DRIVE は、聴く環境で答えが変わる。

LISTEN

耳を戻す

作ったあとで、もう一度ワンドロップの曲を聴いてみてほしい。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズには『One Drop』というそのままの名前の曲がある。今度は1拍目の空白と、3拍目の一発だけを追いかけて聴く。

自分で組んだあとの耳は、組む前とは別のものになっている。それが分かれば、この記事の役目は終わりだ。